Q.マンションを貸しています。このあいだ、更新料の定めが違法になるかもしれなという話を聞きましたが本当ですか?

A.賃貸借契約書に明確に記載された更新料の条項は、賃料や更新までの期間に照らして高額過ぎるなどの特段の事情がない限り適法(有効)です。

 

 更新料とは、首都圏や京都府、滋賀県など、一部の地域で見うけられるもので、賃貸借契約において1年や2年の契約期間満了後、同じ部屋を賃借したい借主が、契約更新のために貸主へ支払う金銭(賃料の1〜2カ月分程度の例が多い)のことを指します。

 この更新料は、更新時に借主から一方的に支払わなければならないことから、更新料を定める条項が消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)にあたり無効なのではないかとして主に関西地域において裁判で争われました。

中でも、

(1)家賃4.5万円、更新期間1年、更新料10万円の事案

(2)家賃3.8万円、更新期間1年、更新料7.6万円の事案

(いずれも京都市内の物件)

について、大阪高等裁判所が、これらの更新料条項は消費者契約法10条に反し無効であるとして、支払済み更新料の返還を認めた判決が下されたため賃貸業界が騒然としました。

 しかし最高裁判所は、平成23年7月15日、以下の理由により上記(1)(2)の事案の更新料はいずれも有効であるとして大阪高裁の判決を破棄しました(最高裁平21(オ)第1744号、平21(受)第2078号、最高裁平22(オ)第863号、平22(受)第1066号、成23年7月15日)。

 すなわち、更新料条項は「任意規定の適用による場合に比し、消費者である賃借人の義務を加重するものにあたるというべき」としながらも、「更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有する」ことから、「更新料の支払いにはおよそ経済的合理性がないなどと言うことはできない。また、一定の地域において・・・更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であることや,従前,裁判上の和解手続等においても,更新料条項は公序良俗に反するなどとして,これを当然に無効とする取扱いがされてこなかったこと・・・からすると,更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され,賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に,賃借人と賃貸人との間に,更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について,看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない」として、「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう『民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの』には当たらないと解するのが相当である」、すなわち条項は有効であると判示しました。

 そして、上記(1)(2)いずれの事案も、「賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない」として、更新料の条項は有効であると判示しました。

 このように、更新料の条項は、それが明確に契約書に記載されている場合には、更新料が「高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り」その条項は有効と判断されるため、更新料が違法であると判断されることはなくなっています。現にこの判決以後、下級審も含め更新料を無効とする判決は出ていないようです(平成25年8月現在)。

 もっとも、すべての更新料条項が有効になるわけではありません。更新料条項について賃貸借契約書への記載が曖昧であったり、更新料が家賃や更新期間に比べ極めて高額と判断される場合には、無効とされる余地があります。

 上記(1)(2)の事例からすれば、更新期間1年・更新料2カ月分との定めは有効と解される可能性は高いでしょうが、最高裁判決が「一定の地域において・・・更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であること」と言及していることから、全く更新料の慣習がなかった地域において唐突にこのような定めを置いた場合にどのように判断されるかは必ずしも明らかではなく注意が必要になります。

(文責:弁護士 片山史英