Q 当社の就業規則は,厚生労働省のHPにあるモデル就業規則をそのまま利用しているのですが,何か不都合はあるのでしょうか。

A モデル就業規則をそのまま採用すると,労務管理の面でさまざまな不都合が生じる可能性があります。会社の実情に合わせた就業規則を策定することを検討すべきです。


 厚生労働省は,HPにおいて「モデル就業規則」を公開しています。
 (平成25年4月1日現在のものとしてhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/model/
 これ以外にも,インターネットや書籍などで就業規則のひな型が流通しています。

 しかし,厚生労働省HPで公開されているモデル就業規則をそのまま利用すると,労務管理の面でさまざまな不都合が生じる可能性があります。
 
(1)休職及び復職
 モデル就業規則は,休職及び復職に関する規定が不十分です。具体的には,休職事由が不十分である,断続欠勤の場合や休職・復職を繰り返したケースにおける休職期間の通算規定がない,産業医の受診を義務付ける規定がない,病気が「治癒」したかどうかを判断するための診断書の提出義務が規定されていない等の問題があります。
 そのため,モデル就業規則をそのまま使用していると,近時増加しているメンタルヘルス不調の事案において,適切な対応を取ることができません。

(2)懲戒事由
 モデル就業規則の懲戒事由は抽象的で範囲も狭いため,いかなる場合にいかなる懲戒処分を実施できるのかが不明確です。モデル就業規則をそのまま利用すると,肝心な時に懲戒処分が実施できないか,実施しても無効となる可能性があります。
 例えば,会社の備品を破損した場合,会社の資料を社外に流出した場合,証憑類やデータを偽造した場合等において,そもそも懲戒処分を実施できるのか,できるとしてどの程度の懲戒処分を実施すべきかが,就業規則上明確ではありません。
 このように,非常に使い勝手の悪い就業規則になってしまいます。
 また,いかなる場合に懲戒処分を実施すべきかは会社の業務内容によって千差万別であるため,会社の実状に合致した懲戒事由を具体的に規定する必要があります。例えば,運送業であれば交通法規違反を懲戒事由に加える必要があります。官公庁との取引が多い業種であれば,贈賄にあたり得る不当な利益供与を懲戒事由として明記し,社員に周知徹底すべきでしょう。

 以上はモデル就業規則をそのまま利用した場合の問題点の一例です。このほかにも,試用期間の延長規定がない,退職時の引継義務の規定がない等,モデル就業規則には多くの問題点があります。

 このような問題点は,就業規則で適切な規定を設ければ解消することができます。
 就業規則は,御社と従業員とが守らなければならないルールです。安易なモデル就業規則の利用は避け,御社の実情に即した使いやすい就業規則を策定すべきです。

(文責:弁護士 赤堀有吾)

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