改正特許法(平成24年4月1日施行)

特許法の主な改正点(平成23年改正)

 昨年特許法が改正され、平成24年4月1日に施行されましたが、今回の改正はかなり広範に渡るものであるため、ここでは主な改正点に絞って説明いたします。

 1.ライセンスの対象となっている特許権が、特許権者によって第三者に勝手に売却されてしまった場合でも、ライセンスを受けている者は、この第三者(特許譲受人)に対しても特許のライセンスを受けていることを主張・対抗できるようになりました。
 <当然対抗制度の導入(改正特許法99条)>

特許ライセンス契約において、ある特許のライセンスを受けている者(ライセンシー)は、あくまでも特許権者(ライセンサー)と契約を結んでいるにすぎないため、万が一当該特許権が特許権者から第三者に譲渡(売却等)されてしまうと、ライセンシーは、この特許権を譲り受けた第三者(特許譲受人)に対して、ライセンスを受けていることを主張・対抗することができないのが原則でした。このような場合に、ライセンシーが当該ライセンスを第三者に対抗できるようにするためには、ライセンス契約を受けていることを特許庁に登録しなければなりませんでした(通常実施権の登録制度(旧特許法99条1項)、包括的ライセンス契約についての特定通常実施権登録制度(今回廃止)参照。)。

しかし、このような登録をするには、ライセンシーとライセンサーの協力(共同申請や同意書)が必要ですが、ライセンシーからライセンサーに協力を求めることが容易とは限らないこと、登録をすると当該特許にライセンスがなされているという事実が公開されてしまうことなどから、この登録制度はほとんど活用されておらず(1年間で数件程度)、結果として、ライセンシーの保護が不十分であるという問題がありました。

そこで、通常実施権の登録をせずとも、ライセンシーは、常に、特許権譲受人(第三者)に対して、ライセンスを受けていることを対抗できるようになりました(改正特許法99条1項。当然対抗制度)。

これにより、ライセンシーの保護は強化されましたが、その反面、特許権譲受人にとっては、特許権を譲り受ける時に、当該特許権にライセンシーが存在するのか十分な調査(デューデリジェンス)が求められるとともに、譲渡人に対して、そのようなライセンシーが存在しない(存在する場合はどのような条件であるか)等について保証を求めておくことが必要になると考えられます。

なお、ライセンス契約が施行日(平成24年4月1日)前に締結されたものであっても、ライセンシーは、当該ライセンスを特許権譲受人(第三者)に対して当然に対抗できるようになりました。

2. 新規発明の特許を受ける権利を有する者が、当該発明を出願前に公表してしまっても、6カ月以内に特許出願を行えば、当該公表によって新規性がないと判断されてしまうことが避けられるようになりました。
 <新規性喪失の例外(グレースピリオド)の拡大(改正特許法30条2項)>

特許を受けようとする発明が、特許出願前に公知であった場合、当該発明は特許を受けることができません。

従前は、発明者などの特許を受ける権利を有する者自らがその発明を公表してしまった場合も、特定の例外を除き、当該発明の新規性はないものとして特許を受けることはできませんでした(旧特許法30条)。

しかし、本改正により、施行日後の出願については、新規発明の特許を受ける権利を有する者が当該発明を公表した場合[1]に限り、発表メディアの如何に依らず、公表してから6カ月以内に特許出願をすれば、新規性は喪失しないものとして扱われることとなりました(改正特許法30条2項)。これにより、自社の新規発明技術を使った新製品の発表が、当該発明の特許出願よりも前になされた場合であっても、当該発明について特許を受けられる可能性が出てくることになりました。

3. 発明者ではない他人が、当該発明を無断で特許出願し、それが特許登録された場合も、真の権利者は、その特許権を自分のものにできるようになりました。
 <冒認出願に関する救済措置の整備(改正特許法74条1項)>

 従前は、発明者とは異なる者など、特許を受ける権利を有しない者が、真の権利者に無断で発明を特許出願し、かつ、この特許が成立してしまった場合には、真の権利者が、この発明の権利を自分のものにする術がなく、その保護が十分ではありませんでした(真の権利者は、冒認者に対して損害賠償を請求したり、当該特許を無効審判により無効にすることができるにとどまりました。)。

そこで本改正では、施行日以降の特許出願においては、特許成立後でも、真の権利者に当該特許権を移転させることができるようになりました(改正特許法74条1項、附則2条9項)。

なお、特許が成立する前の発明者変更手続(真の発明者が誰かを訴訟で争い、その確認判決を特許庁に提出することで出願人の名義人(特許権者)を変更すること。)については従前通り変更はありません。

http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/binran/045-25.pdf

 その他にも、「審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求の禁止」、「審決の確定の範囲等に係る規定の整備」、「再審の訴え等における主張の制限」、「無効審判の確定審決の第三者効の廃止」、「料金の見直し」などの改正もなされました。詳しくは当事務所へお尋ねください。

(文責:片山史英

(参考URL)http://www.jpo.go.jp/torikumi/kaisei/kaisei2/tokkyohoutou_kaiei_230608.htm



[1] 特許を受ける権利が共有(例えばAとBの共有)であってAのみが公表した場合は、理論的には議論があるところですが、Aによる公表がAB両者の代表としてなされたものであると特許庁に申し述べることで本条(新規性喪失の例外)の適用を受けることが考えられるでしょう。